晴れの日ならぬ、異なる立場で起こること。
思春期と第三者。
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思春期って息が詰まる。抽象度を増した思考が可能になる時期と、2次性徴による体の変化がドッキングして、大変なことになってしまう。そんな時にふらっと現れた他者と出会うことで、息が出来たりする。
変化には、きっと期待値が潜在している。心も体も2次性徴に伴う大幅改定を終え、期待値を下回る結果であると、それはコンプレックスとしてしこりを残し続ける。
本書は、しこりをなんとかしようと必死な母と、大幅改定の途上にいる娘と、母の妹であり叔母の第三者の3日間を記述している。
母と子なんて、所詮他者なんだからわかり合えない。それを超越しようと本音と卵をぶつけ合う。外野からは、どう見ても愚行だけど、当事者たちの必死さが伝わってくるラストであった。
見えないものが、無かったことにならないために。
今週の本 ブレイディみかこ著(2019)ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー.新潮社.
人種、性別、階級、世は差別に満ち溢れているのかもしれない。
文中で彼が「僕は、人間は人をいじめるのが好きじゃないんだと思う。罰するのが好きなんだ」と言ったことに呆気に取られた。
イギリスの厳しい階級社会について、聞いたことがある。留学してた知人に確認してみると、そんなことはない、と言われたので、止めておけばいいのに、そんなことないはずない、と言うと、住んでもないのに何がわかるのか、と言われたので、黙った。
でも、やっぱり、そうだった。
そんな国でも移民を受け入れて、あえて波風を立ててでも教育する。昨今では多様性がどうの、と言われているが、ドメスティックな環境で多様性という言葉だけが独り歩きをしているように思えてくる。
自分に見えないものが、無かったことにならないためにも、やはり読書は必須と思わされる1冊。
キラリと輝くものの本質は。
今週の本 村上龍著.ラブ&ポップ トパーズⅡ(1991).角川文庫.
援助交際がどうの、というのは、売り手と買い手の合意形成が出来ているので、第三者がとやかく言うことではない、と私は思う。“楽に稼げる”は、いわば妄想に過ぎない。この本に出てくる彼女たちも、いろんな思いや誘惑の中で生きている。
キラリと輝くトパーズの指輪を見た時に、これは絶対に欲しい!、自分で手に入れないと意味がないという衝動が裕美を突き動かせた。
当時では珍しい携帯電話の貸し借りのシーンや、テレクラの録音を聞く描写が特徴的で、中でもロッテリアの接客とテレクラの音声を聞くリズミカルな文体に技を感じる。
援助交際って言葉は今では死語のようだけど、パパ活に置き換わっただけだと、ふと思う夕暮れ。
母と子、狂気に満ちた不思議な関係。
行く先、行き着く先は。
運が無かったで片付く程、人生は簡単じゃない。出稼ぎ、息子の死、穏やかな余生、妻の死。そして男は上野へ。
過去と現在へ、時制が行き来する。原発、ホームレス、震災後の復興について考えさせられ、それまで何気なくぷらぷら歩いていた上野公園の見え方が変わる一冊。
推しが燃えたら。
今週の本
宇佐見りん著(2021)『推し、燃ゆ』河出書房新社
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日常が上手く行かなくたって、私には推しがいるから大丈夫。
主人公のあかりは、生きにくさ(俗に言う、おそらくこれは発達障害)を抱えているが、推しへの熱意から成る社会生活は惜しまずできちゃう。
あかりを表面的にしか捉えていないと、彼女の本質というような、隠れた能力はわからない。彼女はさぼってるわけでも、努力していないわけでもなく、いわゆる社会で、その発達段階で多くの人がクリアしていることの多くがスムースにできない。でも、推しに関しては惜しみなく、熱意を注いで、社会生活を展開している。
こういう人、たぶん、たまに出会ってる。たくさんの人の本質を、他者が見て理解を示す必要があるかは、わからない。けど、彼女もしくは彼らが、生きることに困らない、これも俗に言う自立や自活が、各々の形でできるといいし、それが多様な社会なのかとも思ったりする。
推しのマンションを見に行くラストシーンが、何とも言えず秀逸。